アンサンブルシリーズ2019表


11月20日(水)石井啓子アンサンブルシリーズが東京文化会館小ホールにて開催された。
1987年に始めたこのコンサート、途中開催できなかった年もあり、今回が30回目となった。 ここまでやってこれたのは聴きに来て下さるお客様があってこそと、深く感謝しています。
子供が3人、その末っ子が9歳になった時、何か自分のやりたい事を始めても良いかなと思った。その頃はまだピアノ三重奏など室内楽を本格的に取り組んでいる演奏家は少なかった。日本フィルの親しいメンバーにお願いして石井と3人で始めたこのコンサート、途中で日本フィル以外のチェリストにお願いした事もあった。でも桜庭氏に出会ってから、初めはステージに彼を立たせる事ができるかどうかわからなかったが、彼の演奏したいという強烈な思いが舞台復帰を可能にして、一緒に演奏出来る様になって、本当に私は幸せだった。共演者が私なんぞで良いのかと思う程、音楽に対して真摯な姿勢の桜庭氏、幸せを感じているだけでは済まされないのだが。今回のショスタコーヴィチ のピアノトリオも、聴いた人はこの曲がこんなに美しい曲とは知らなかったと言っていた。冒頭のチェロのソロ、超超絶技巧のハーモニクスをこれだけ音楽的に悲しみの歌として弾けるチェリストは桜庭氏以外にはいないと私は思っている。
この日は、冒頭にショスタコーヴィチ の前奏曲を陽子と二人で演奏した。これでお客さんの心を一気につかみましたねと終演後感想を述べられた方がいた。その後、プロコフィエフのフルートとピアノのためのソナタ。この曲はフルートという楽器にとっては低い音が多く、音も心地よい和音ばかりではないところを陽子は全部覚えていつものように譜面無しで演奏した。終わった途端ブラボーの声が響いた。続いてショスタコーヴィチ のピアノトリオ。後半はベートーヴェンの大公トリオ。プロコフィエフ25分、ショスタコーヴィチ 28 分、大公35分という大曲続きのプログラムだった。
アンコールを終えると時計はもう9時を回っていた。その後、ホワイエでのお客様との応対もあり、とても遅くなった。
でも、お客様一人一人一人の熱い、そして温かい視線を感じた一夜でした。 

アンサンブルシリーズ30