12月26日(木)34回目の石井啓子アンサンブルシリーズが終わった。
300人弱のお客様の中には東京文化会館友の会の招待者もいて、何回もブラボーと叫んでいた人はそんな中の一人かと思ったが悪い気はしなかった。
アレンスキーのトリオは石突美奈さんと桜庭さんとで。初めて本番を迎える曲の上、プログラムの初めの曲だったのでかなり緊張したが、美しいところ、楽しげなところを特に大事にしようと心がけた。陽子と石井とのショスタコーヴィッチ5つの小品は、陽子のペースに合わせてまどろむような曲、踊り出したくなるような曲を。休憩を挟んでシューベルトのトリオを石井と桜庭さんとで。この曲はこれまで少しずつ本番もあったので落ち着いて弾けた。桜庭さんのチェロは一際輝いていて、私は導かれた。
桜庭さんとアンサンブルシリーズで一緒に演奏を始めてから11年。ずっと演奏の場から離れていた桜庭さんを引き込んで演奏を始めて3.4年経ってからのことだった。今ではすっかり昔の事を忘れてしまう程の演奏ができるようになり、今年は更に一皮剥けたように一段と冴えていた。
先日、ピアニスト舘野泉さんの特集をテレビで見た。
彼は病気で右手は使えなくなってしまった。しばらく演奏から離れていたが、左手だけで演奏を始め、彼のために左手のための曲を書いてくれる人も現れてきた。その演奏は聴いただけではとても左手だけで演奏しているとは思えない素晴らしい音楽だった。彼は今、神様が「それだけ頑張っているのなら右手も使えるようにしてあげましょう。」と言っても、もう左手だけで十分に演奏できるようになったので、そういう申し出は要りませんと断るそうだ。もちろんとてつもない努力があってこその事だと思う。
桜庭さんも、演奏したいというとてつもない大きな欲望があったからこそ今、ここまで復活できたのだと思う。これからはソロにも挑戦しようと思い始めているようだ。
楽しみだ。そして、私も負けないように努力しなければと思った。




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40年振りに聴きに来てくれたアメリカ在住の元弟子

2016年に岩国西ロータリークラブ主催で岩国市内の中学校を訪問し、前半は癌予防の講演、後半石井啓一郎啓子による演奏会を開催することが決まった。その年の10月、まず岩国中学校と麻里布中学校を訪れた。演奏時間は1時間で、ソナタや小品、それにお話しも交えて大変好評だった。それから毎年、次々と市内の中学校を訪れた。
しかし2020年コロナの蔓延で途絶えた。
2022年に再開。岩国市内の中学校はほぼ全部訪問したということで今年は再び岩国中学校へ。
岩国中学校は近隣の生徒数が少なくなった柱野中学校や藤河中学校も統合したので生徒数が現在550人余り。遠くからはスクールバスで通ってくる子もいるそうだ。
今回はブラームスのハンガリア舞曲やバスク綺想曲などの他に、今年亡くなった谷川俊太郎の詩に武満徹が曲を付けた「死んだ男の残したものは」も演奏した。これはベトナム戦争の時の詩だが、今、ウクライナやイスラエルで起こっている戦争にも通じるものがある。戦争は決して初めてはならないというメッセージ。生徒には詩をプリントして配った。ヴァイオリンの演奏では歌詞は無いが、どれほど伝わったか。
今年、日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞した。核兵器は決して二度と使ってはならないのに今、核の使用をほのめかす国も出てきている。そういう、正に危機感を感じるからこその受賞だと思う。日本の非核三原則も揺らいでいる。
演奏を続けていく中で、起こしてはならない戦争のことも言い続けられたらと思った。

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8月24日(土)午後5時より宏樹庵にて「馬頭琴とホーミーの自然の調べ」という演奏会が開かれた。
主催は、奏&想&創と自然の調べ実行委員会。30人限定でスタッフを含めて36~37人が座布団や椅子に座り宏樹庵の2階は人で埋まった。演奏者の背後には宏二郎の錦川の朝もやの絵が配され、そのほかにも部屋のあちこちに絵が展示されて、音楽と絵のコラボとなった。
岡林立哉さんは高知県在住の人で、各国の音楽祭への出演や全国でソロ活動を展開している演奏家。馬頭琴はモンゴルの民族楽器で、ヴァイオリンでいうネックの部分に馬の頭の彫刻が取り付けられている。弦は馬の尻尾の毛を束ねたもの2本、弓の毛も馬の毛。胴体は一般的には木製の箱だが、岡林さんの楽器には羊の皮が張られていた。大変素朴な優しい音がする。ホーミーとは人間のだみ声のような音の上に、裏声のような高い音を同時に発声し、2つの旋律を一人の人が同時に出す不思議な声法だった。モンゴルでも西の方の地域にしか残っていない声法だそうだ。
岡林さんは約1時間半にわたって、メロディがはっきりしている曲、もやもやとした風の流れのような曲、いろいろな曲を弾いては間にモンゴルとはどういう所か、人々の生活、馬との付き合い方などを話してくれた。台地に灯りが少ないので星は大変美しいそうだ。話を聞いて、音楽を聴いて、宏二郎などはモンゴルに行きたくなったようだった。
終演後、取り寄せたお弁当をみんなで食べながら、そこでも話がはずんだ。
ゆるやかな空気が流れた夕べだった。
竹やぶの小径にはろうそくが灯されてお帰りのお客様を見送った。


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主催者の石井由紀さん。開演前の挨拶

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馬頭琴の優しい音色が宏二郎の絵とともに部屋に流れる

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話をされる岡林さん

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竹やぶの小径のろうそく

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