カテゴリ: 宏樹庵便り

パチパチッ、パチパチッ!
ミュージックキャンプが終わって間もない5月8日のお昼過ぎ、掃除をしていたら妙な音がするのに気が付いた。宏樹庵の庭の生垣を隔てた直ぐ向こう側には昔は畑を作っていたが今はもう荒れ放題になっている土地がある。1年に1,2度筍の季節になると管理している人が筍の伐採に来る。そのおじさんがそこで何か作業をしているのかと思い、門を出て見に行った。しかし誰もいない。
パチパチッ、パチパチッ!
音はだんだん大きくなってきた。どこかが火事だ!
宏樹庵の西側の坂を 降りるとそこに誰も住んでいない古い家がある。もしかしてそこ?そこだったらすぐに宏樹庵の林に燃え広がってしまう。私は走った!しかしその家は無事だった。そこから遠くに黒い煙が空高くあがっているのが見えた。田んぼの向こうだ!
戻って来て、今度は竹やぶの小径を出た所に行ってみた。そこには火の元を見つめている近所の人が集まっていた。こんもりした林の向こうでパチパチと大きな音を立てながらメラメラと火の手が上がっている。あの辺りは荒れた野原だと近所の人が話している。車が通れない道しか無いとも。こんなにパチパチと大きな音がするのはきっと竹が燃えちょるんじゃろうねぇ。
音がし始めてからもう30分以上経っているのにまだ消防車が来ない。折からかなり強い風が海から宏樹庵に向かって吹きあげている。ああ、早く消してくれないと燃え広がってしまう。あっ!隣接する一軒の家が燃えた!
やっと向こう側からの放水が始まった。こちら側の公園の所にも消防車が2台来たが道がないので火の元に近付けない。ホースを繋ぐ。早く、早く!
炎は次第に見えなくなった。しかし白い煙がまだまだ出ている。完全に消さないとまたどこから燃え出すか分からない。心配そうに見守る人の数も知らない間に増えていた。
3時過ぎにやっと消え、見ていた人達も帰っていった。
やれやれ延焼しなくて本当に良かった。怖かった。まだ心臓がドキドキしている。 

IMG_0927
向こうに家が並んでいる辺りが火事現場。右の近景が宏樹庵の竹やぶと林
 

5月3日から宏樹庵と黒磯自治会館にてミュージックキャンプ2022が始まった。
桜庭先生と何人かの受講生は2日に来て練習を始めた。
今回の参加者は東京から4人、神奈川から3人、埼玉から4人、西宮から4人、京都から1人、大津から3人、宇部から5人、山口から4人、周南から1人、広島から4人、柳井から2人、岩国から5人の40人。初心者からプロの人達までそれぞれが真剣に曲に向き合い練習に励んだ。岩国、柳井からの初参加の人は合奏のみの人が殆どだったが楽しそうに弾いていた。
今回は前回弾きたいと思っていたのにコロナで参加出来なくなってしまい実現しなかった曲も採用されたのでピアノの人が一人で何曲も弾いて、参加者数の割りに曲数が多くなった。そのため初日のレッスンは朝10時に始まり、講師はお昼ご飯はどうにか食べることができたが、夜ご飯抜きでぶっ通し夜の10時まで続いた。2日目は朝から詰めてレッスンできたので(初日は東京などから来る人のために到着時間に合わせてレッスンを組まなければならないので)それほど遅くはならなかったが長時間のレッスンとなり、反省点の一つ。
食事係は宏二郎と藍、それに陽子は今回演奏がなかったので係に加わる。昨年、宏二郎は演奏もあって忙しかったが、今回は料理だけに専念、それも食についてこだわりがあるので、サンドイッチのパンも100個以上自分で焼き、マヨネーズもドレッシングも、サンドイッチに挟むハムもお好み焼きの紅ショウガも全部自分で作り、添加物の無い食生活をという強い思いは伝わったかな。藤生の魚市場の改修工事が始まって今年中には立派な施設が出来そうだが、それに先立って業者だけでなく個人にも販売してくれるようになり、バーベキューの素材の購入にはだいぶ助かった。
5日の散歩がてらのコンサートは午後1時半から由宇文化会館にて。入場料500円。4日にKRYの取材が入り夜6時からのニュースで放映してくれたようだがそれを見て来てくれた人も何人かいたかもしれない。大人も子供も緊張しながら本番は特別な体験。コンサートは4時間にも及び、お客様には少々疲れるプログラムだった。お客様の中にはミュージックキャンプが22年前に始まった時の受講生のご両親もいた。その受講生は当時小学4年生だったがこの度結婚されたとの事だった。初回の受講生が今回子供と一緒に参加するという事もあり、世代を重ねてこの会は続いていくのかもしれない。

白と赤のウツギが美しく咲いた。

Image-1 (1)
合奏のレッスン風景
IMG_0886
京大に入った望君が久しぶりに参加


Image-1 (11)
KRYの取材が入る

IMG_0895 (1)
朝食は近所の人たちが作ってくれる。この3升いっぺんに焚いたご飯が美味しくて毎回参加者の間で大好評
IMG_0893 (1)
クレソンのサラダ、これは近くの川に晴香と石井が採りにいった
Image-1
2日に藤生の魚市場に買い出し
Image-1 (2)
宏二郎は100個以上のパンを前日までに焼く

Image-1 (4)
このコンビノスという貝が大変おいしかった
Image-1 (6)
お肉もたっぷり。ラム肉が好評だったとか
Image-1 (7)
スペアリブ
Image-1 (5)
陽子も今回は料理の助っ人
Image-1 (9)
合奏の会場練習
合奏 ミカンの花咲く丘
本番
ほのかと絢
ほのかと絢香と秀太郎
ハンガリー舞曲
一青はハンガリー舞曲に挑戦
びっくりシンフォニー
絢香はびっくりシンフォニーを江波弘介君と秀太郎とで演奏
メンデルスゾーントリオ
最後は講師三人でメンデルスゾーンのトリオ2番の4楽章

IMG_0926













4月2日(土)午後2時よりシンフォニア岩国多目的ホールにて石井啓一郎ファミリーコンサートが開催された。
このコンサートも2002年に始まり、ちょうど20年が過ぎた。コロナで様々な企画が中止や延期を余儀なくされる中、奇跡的に開催は途切れることなく続いた。しかし客足は減り、運営する啓&啓倶楽部のスタッフも高齢化した。
割り切れる答えばかりが求められ、何色なのか解らないような曖昧な所は敬遠される世相の今、生の音楽の持つ力が求められている。機械を通してではない生身の音楽は五感で感じられて人を感動させる。心が動く。その事を大切に啓&啓倶楽部の活動は続けられている。
今回のプログラムは石井啓一郎、石井陽子、石井啓子の3人による愛のあいさつで始まり、前半はモーツァルトとベートーヴェンのヴァイオリンとピアノのためのソナタ、後半はフルートソロの福島和夫作曲「冥」、ピアノが加わって「ふるさとによるポエム」、次にいつもはヴァイオリンとピアノで演奏しているカナリアを3人で。そしてスコットの蓮の国、チゴイネルワイゼンと続いた。
お客さんは100人ほど。多目的ホール全体にバランスよく座ってくれたので淋しい感じではなかった。石井啓一郎のトークにも素直に反応し暖かい雰囲気だ。
「冥」は現存する日本の作曲家がドイツのダルムシュタット現代音楽祭で一緒だった同胞を偲んで書いた曲で尺八のような音が出る。初めてこのような音楽に触れたお客さんはびっくりしたようだった。アンケートには「岩国の春の楽しみは桜とファミリーコンサートです。」と書いて下さった方もいた。

愛のあいさつ2

愛のあいさつ
冥
鬼気迫る「冥」

楽屋で
終演後、楽屋にて




私の母は現役の書家。現在94歳。かな分野の重鎮、仲田幹一氏に永年師事し、師亡き後も会を背負っていろいろと活躍、大きな賞も頂き、皇族方のご高覧も拝している。
書は子供の頃から習っていて、子育て時期を除いてはほぼ一貫して続いた。一方、やはり子供の時始めたピアノは結婚して私が生まれる直前まで弾いていたが、私が生まれてからは一切ピアノに触れることはなかった。
それが、昨年の冬の初めころから再びピアノを弾き始めた。―——

実家には母が子供の時親に買ってもらった昭和初期製のヤマハのピアノが置かれていた。
もう古くてヤマハの人に頼んでも調律はお手上げと言われた。それを、ひょんな事で知り合った調律師さんが昨年の2月、根気よく何とか弾けるくらいにまで直してくれた。
夏は大変暑くて一時体調を崩していた母が、涼しくなって、私が実家で練習しているのを聴いて、私もちょっと弾いてみようかしらと言い出した。ベートーヴェンのトルコ行進曲やエリーゼのために等の楽譜を渡すとぼちぼち譜読みを始めた。70年余りも全く弾いていないのに、易しい譜面なら読めて、指も何とか動いた。エリーゼのためにが弾けるようになって、次に勧めたのがリヒナーの忘れな草。これは全然知らない曲だったが、私が弾いてみせると、きれいな曲ね、と気に入ったようだった。
そこで、楽しく始めたピアノが続くように、元旦に家族が集まった時、みんなでホームコンサートを開いてみようと思いついた。私の妹も昔弾いていたヴァイオリンを最近また始めたようだし、孫たちにもそれぞれ弾かせよう。
そう決めて母に伝えると、母は俄然積極的に練習に打ち込んだ。ふだん腰が痛いだの、首が痛いだの言っているので、あまり根を詰めて練習したらダメと私が忠告するのだが、人前で弾くことにこだわりがあった。でも心配する程長い時間練習していても、その間は不思議なことに腰が痛くならなかった。
晴香と絢香のお蔭で楽しい元旦コンサートのプログラムが出来上がった。

そして2022年元旦を迎える。
開演午後3時半。まず晴香と石井でモーツァルトのアイネ クライネ ナハトムジークの1楽章。次に一青がバッハのメヌエットとフランス民謡 アヴィニヨンの橋の上で を上手に弾く。さて次が母。ちょっと緊張した面持ちだったが、弾き始めると美しいメロディを心で感じ、また少したたみかけるような所もあり、大変音楽的表情豊かに弾き終えた。拍手喝采!!!
あとの子供たちも、妹もとても上手に弾けた。プログラムはそれで終わりと思っていたのだが、皆の要望でアンコールとして私達も愛の喜びなどを弾いた。
母は自分の演奏にある程度満足して、ピアノを続ける気になっている。
毎年恒例になりそうな予感。
いいお正月だった。

IMG_0297
一青の演奏
IMG_0300
母の演奏

ぷログラム表

プログラム




1999年宏樹庵が完成した折に運び込まれたアメリカ製の薪ストーブ。
我が家ではこれ一つで家全体の暖を取っている。
19世紀初めのアメリカの建築様式に基づく外観で、幅66センチ、奥行59センチ、高さ75センチ、重さは200キロ近くある。ガラス窓と空気調整口を除いてはすべて特別に贅沢な厚い鋳鉄製で、側面のドアから50センチくらいの長さの丸太も入れられる。天板はざらざらした面で、お湯くらいは沸かせるが料理には向いていないのが残念。
煙突は2階のピアノが置いてある部屋を突き抜けて屋根の上までまっすぐ伸びている。2階の部分は触ってもやけどをしないよう二重構造になっているが、暖かいので部屋全体もほんわかと暖まる。
ストーブの設置位置は宏樹庵の設計段階から決まっていたので、その部分は特に頑丈に作られているはずなのだが、20年近く経つとストーブがあまりに重いので床が傾いてきてそばのガラス戸が閉めにくくなった。そこで宏樹庵を建てた大工さん達に頼んで一度床下から補強をしてもらった。しかし、それからも少し傾いている感じがしないでもない。
薪は知り合いの誰彼となく、樹を切ったからとか、古い家を解体したからとか言って持って来てくれる。それをチェーンソーで切ったり、鉈で割ったりするのは石井の役目。下半身がしびれてふらふらするという彼も薪割りとなると上手だ。スコーンッと割れると気持ちいい。節などあって割りにくい木も矢を使って根気よく割る。
薪のパチパチと燃える音、ゆらゆらとする炎——見ていて飽きない。
それに暖かさが電気やガスと違って何とも柔らかい。

今まで煙突掃除は業者に頼んでいた。しかし、宏二郎の家が建って、そこに設置したストーブのお店の人に自分でもできますよと言われて掃除道具を買った。
この冬の初め、初めてそれを使って掃除してみた。
掃除は部屋を汚すこともなく上手にできた。でも、その後、煙突をはめるのが私一人ではできなくて宏二郎に手伝ってもらった。
掃除しただけあって、薪はとてもよく燃える。


 身のうちに炉火ゆらゆらと映るなり

IMG_0111

IMG_0121

IMG_0646



↑このページのトップヘ