2023年08月

その子は小さい時から宏樹庵に毎年夏、家族で来ていた。
花火の音が怖くて、みんなで花火をやる時はやる場所から一番遠く離れているトイレに灯りを点けて隠れていた。
両親が訳あって離婚した。母親はその子とその弟妹を連れて母親の父の元に移り住んだ。当然学校は変わらなければならなかった。中学1年の3学期。その転校先の雰囲気に馴染めなかった。友達は出来ず、学校に行っても教室に入れなくて別の部屋で過ごした。しかし、勉強が嫌いではなく、塾に通って高校には受かった。その高校へ通うのも次第に難しくなり、2年になる時転校した。しかし、転校した高校にも通えなくなった。だんだんゲームにのめり込み、ゲームを買うお金が欲しくて祖父のお金に手を出すこともあるようになる。母親はさすがに困り果て、カウンセラーの人に相談した。とにかくすべての外界のものが怖いので、母親だけは救いの窓口になるべく、優しく接することを母親は決心する。
その子が夏休み、一人ででも、なるべく早く、宏樹庵に来たいと言う。母親に聞けば、昼夜が逆になり、昼間は寝てばかり、夜は起きてゲームばかり、食事もまともに取れないと言う。私はどうしようかと思ったが、来たいのなら来ればと承諾した。
8月1日、彼は新幹線で一人でやって来た。
母親はああ言っていたが、私たち老人の前では彼は素直だった。ゲームはやるが、食事は私たちとい一緒に三度三度きちんと食べて、好き嫌いも言わない。石井が時折新聞記事の話題などを投げかけても話がかみ合わないこともなかった。
ところが9日に陽子と子供たちが来てから状況が変わった。
昨年までは陽子の子供たちと仲良くやれていたのに、時々衝突して気持ちが折れる。救いを求めるように母親、或いは仕事をしている母親にはそうしょっちゅうかけられないので祖父に電話をかける。1時間以上も話している。機嫌が直れば陽子たちとでかけたりする。でも、どういう言葉が気に障ったのか、突然プッツンときて部屋に閉じこもってしまう。何が悪かったのかこちらには何も分からない。ゲームだけが外界から身を守る唯一の術のようだった。
17日にやっと母親が宏樹庵に来た。前日から待ち焦がれる事、異常な程だった。母親が来ても気持ちが折れることはあった。しかし復活するのに前よりも時間がかからなくなった。
8月19日彼の17歳!!!のお誕生日をみんなでお祝いした。彼は嬉しそうだった。
8月23日彼は母親とともに柏市の家に帰っていった。帰り際に、「また来る。」とぼそっと私に言った。
2学期が始まる。でも学校には行けないのだろう。このままの自分ではいけないと心の中のどこかでは思い始めている風にも思える。一人で宏樹庵に来たかったのだから。これからどうするのだろう。どういう大人になるのだろうか。

うちの孫の一人、小学3年生も学校に行けてない。
いつだったか新聞に、小中学生の28万7千人以上が学校に行けてないという記事が載っていた。学校側も来れないのだったら無理に来るように説得はしないらしい。フリースクールなどの別の手段に頼る。
学校が悪い?先生が悪い?親が悪い?子供がわがまま?

学校という概念が変わってきた。

5月30日の夜、宏樹庵の池のカエル達が特ににぎやかに鳴いていた。
カエルの声の中でもひときわ高い声で鳴くカエルがいて、カジカガエルではないだろうかと話していた。
翌朝、池の上に張り出した木の枝に綿あめのようなものがくっついているのを発見!!!
調べてみると、モリアオガエルという種類のカエルの卵だということが分かった。
ふだんは林や森の中で生活しているのだが、産卵のために水辺に来て、水の中でメスはたくさんの水分を蓄え、それからオスの待っている木に登って行ってオスに抱きつかれながら泡とともに卵を枝に産み付ける。その卵の数は200~800というからすさまじい生命力だ。
池には多数のイモリが棲んでいるので、生まれ落ちたオタマジャクシが食べられないように籠を置いた。初めは真っ白だった卵は次第に黄色っぽくなってだらんとしてきた。
6月13日の朝、たくさんの小さなオタマジャクシが籠の中にいた。落ちてくるところを見たかったので残念だったが、オタマジャクシは元気だった。少しずつ大きくなっていった。
ところが6月30日の夜、雷もドンピシャ鳴る大雨が降った。朝起きてみると案の定、籠は沈んでしまい、オタマジャクシも外に流れ出てしまっていた。イモリに狙われる。しかし、オタマジャクシの赤ちゃんは狙われてもスルッとかわし、だんだん大きくなったオタマジャクシは反対にイモリにくっついて泳ぐようになった。イモリの方がそんなオタマジャクシをうるさがって逃げるほどだった。
7月29日足が生え始めたオタマジャクシも見かけるようになった。頭も大きくなった。
深く沈んでいたオタマジャクシが垂直に水面に上がって来て水の上に口だけちょこっと出し、またすぐに真下に沈んでいく動作をするようになった。オタマジャクシの成長過程で肺が出来てくるのだろうか。ふだんは底の方でじっとしている。
手はなかなか生えてこない。しっぽもなかなか短くならない。小さい時、与えていた金魚の餌もイモリばかりが群がって食べ、オタマジャクシはほとんど食べなくなった。

孫たちが8月9日に大勢やってきて3・4日観察を怠っていた。
そうしたら8月14日立派なモリアオガエルになった一匹が池の葉の上にちょこんと座っていた!!! 体長は3センチ弱。卵から孵ってからちょうど2か月。孵ったオタマジャクシの数からするととても少ないが、ちゃんと成長してくれて嬉しかった。
これから森の中に帰るのかな。またいつか卵を産みにおいで!


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5月31日朝 木の枝に産み付けられた卵
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6月4日卵の下に籠を置く
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6月8日 卵の色が少しずつ黄色っぽくなってきた
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6月9日 卵がだらんとしてきた
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6月13日オタマジャクシが生まれた

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6月24日 少しずつ大きくなる
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6月25日
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7月1日大雨のあと
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7月6日 他のカエルのオタマジャクシと混ざってしまってどれがモリアオガエルの子なのか?
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食欲旺盛、群がって何かを食べている。お腹を見せるほど勢いよく。
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7月15日 イモリにくっついて泳ぐ
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イモリと共棲
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7月29日足が生えてきた
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8月14日 いつの間にか立派なカエルに!!! 






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