幸明館完成幸明館完成


石井啓子の母、米本一幸の書庫と次男宏二郎のアトリエ棟「幸明館」が完成した。

米本一幸は日本のかな書道界を牽引している書家の重鎮で、毎日書道展で文部科学大臣賞などを受賞している。今年90歳。書歴は長く、作品が自分の家に収納しきれなくなり、岩国には土地があるようなので書庫を建ててくれないかと持ち掛けられたのが5年ほど前。早速どこに建てたらいいか検討した結果、自治会館の横の土地がいいのではということになった。しかし、調べてみるとその土地は市街化調整区域の畑地。それを宅地に変更するのが大変だった。私の直系の子供が、それも他に土地を所有していない子供が自分の家を建てる時のみ許可されると言う。そこで岩国に住むかどうかもわからないまま、宏二郎の住居を建てることになった。書庫は付属した建物として申請。いろいろな申請書を提出して、長い月日を費やしてやっと許可が下りたと思ったら、今度は建てる場所が道路から高い所なので、広島の土砂災害などの後だったため、地盤調査を行い莫大なコンクリート壁で固めないといけない事になった。それにまた1年を要する。ようやく家が建つ平らな土地が出来て地鎮祭を執り行ったのが昨年3月15日。大きな太鼓の音が山にはね返ってこだまになってこの辺り一帯を満たした。

やっと、家が建ち始める。しかし、これがまた延々と、宇宙空間にもつながるかのような時間の流れ方だった。木造の家をと知り合いの大工さんに頼んだのだが、彼が紹介してくれたのが広島の設計士。二人のこだわりで木組み、土壁の設計図。釘を使わず組まれた屋根、竹で編まれた土壁の芯は、それはそれは大変美しかった。その芯に幾重にも土を塗り、乾いてはまた塗り、また乾くのを待つ。大工さんもここまで徹底的に土壁だけでやったことはなかったので工期が大幅に延びる。やっと壁ができ、それから建具や物入れなどを作り始めた。

一昨日は展示室の照明を取り付けた。

今は4月8日の落成式までにある程度までの庭を作ろうと庭師さんが一生懸命敷石などを並べている。


落成式には母も東京から来る。

うぐいすがきれいな声で鳴いている。ここにどれを展示するか、私は200点ほど送られてきた母の作品のいくつかを取り出して見始めた。