宏樹庵を昔の面影を残したまま魅力的な家によみがえらせてくれた九州久留米の建築士、宮本繁雄氏が、その工事の時にかかわってくれた大工さんと跡継ぎの息子さん達を連れて7月26日に宏樹庵にやって来た。
築100年余の家の改築が完成したのは丁度15年前の夏。年月を経て、特に暖炉の辺りが歪んできて戸を閉めても柱との隙間が1㎝程空いてしまうようになった。仕方がないので隙間テープを貼ったり、鍵の位置を変えたりしていた。それを聞いた宮本氏が大工と一緒にジャッキなどを持って来てくれたのだった。
午前11時頃久留米から到着した彼らはすぐに作業に取りかかる。
畳一帖を上げて、そこから床下に潜り込む。非常に重いジャッキや角棒を切ったものなどを床下に持ち込み、ゴザを敷いて狭い空間でも人が動けるようにする。面白い機械を持って来ていた。ロボットのような形をしたそれは水平を測るもので、四方八方にかなり広い範囲に光を放ち、水平の赤い糸のような線を浮かび上がらせていた。この赤い線を頼りに、定規で1㎜の狂いも見逃すことなくジャッキで上げていく。やがて暖炉の重さと煉瓦と石の重さで下がっていたこの一角が元の通りに直った。戸と柱の隙間も無くなり隙間テープもはがした。後から判ったのだが、この一角が直ったお蔭で裏の蔵へ行く扉も閉まり易くなった。

工事1

工事2
赤い線がロボットが放つ水平の線(写真が横を向いているので)
ロボット
水平の線を放つロボット

12時半頃にはもう完成してしまったので、午後は家じゅうのガラス戸の下にはまっている車を取り替えることになった。
その車はもともと樹脂に覆われたものだったのに15年の間にほとんどその樹脂が剥がれ落ちて、戸がガタピシととても動かしにくかった。ガラス戸は22枚もあったが、それを全部外してやり替えてくれた。
びっくりするほどスルスルと戸が動くようになった。初めはこんな動きだったのかと15年の重みを感じた。

5時半頃すべての作業が終わってシャワーを浴びてから宴会が始まった。

翌日の晩、家が恢復したのを祝ってか、月下美人が見事に咲いた。

修理1
ガラス戸を全て外す

修理2
車の取り替え

修理3
古くなった車。樹脂が剥がれ落ちて白い芯だけになっていた

月下美人
芳香豊な月下美人