1月24日(水)午後7時より東京文化会館小ホールにて恒例の石井啓子アンサンブルシリーズが開催された。
1987年頃は室内楽の演奏会は日本ではまだ少なかった。そんな中で日本フィルのチェロ奏者大石修氏やホルンの工藤光博氏の助けを借りて東京神楽坂にある音楽の友ホール(客席200くらい)で本格的定期的な室内楽の演奏会を始めた。1回目のプログラムはハイドンピアノ三重奏曲ト長調 ブラームスホルン三重奏曲 ショスタコーヴィチ ピアノ三重奏曲作品67 2回目はモーツァルトピアノ三重奏曲kv502
メンデルスゾーンピアノ三重奏曲作品49 ブラームスピアノ三重奏曲作品8


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その後チェロ奏者は日本フィルの首席奏者菊地知也氏、東京芸大の教授河野文昭氏、日本フィルの若手伊堂寺聡氏などと変遷し、ある時桜庭茂樹氏に出会った。彼はヨーロッパで20年以上活躍していたが札幌交響楽団の招へいで帰国し、その後退団してからはフリーで仕事をしていた。彼に出会って彼のチェロの音に惚れた。心から惚れた。今までのチェリストとは全然違っていた。私などが共演を頼んでもいいのかどうか躊躇したが、縁あって一緒に演奏するようになった。最初の演奏会は2014年ラフマニノフの悲しみの三重奏曲。その後もラヴェルやショスタコーヴィチの三重奏曲など私も全力を尽くしたし、心に残る演奏だった。
それから10年。
今回のプログラムは陽子とのデュオでベルトミューのロマンティック組曲、マルティヌー スケルツォに始まり、スメタナとベートーヴェン作品70-1の大曲三重奏曲。力の入るプログラムだった。
お客さんも300人近く来てくださり客席はだいぶ埋まっているように見えた。
この演奏会もいつまで続けられるか分からないが、次回は今年12月26日にもう既に決定している。これからプログラムを考えて、聴いて下さる方と一緒に楽しめる演奏会にしたいと思っている。

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終演後。一人さっさと着替えてしまった人がいましたが。

11月に入って2か所の訪問演奏会があった。
1つは9日、岩国市通津の専徳寺の幼稚園日照こども園にて10時半より。
緑色の制服を着た子供たちの目は、これからどんな事が始まろうとしているのか期待に満ちてキラキラしていた。
「愛の挨拶」や「チゴイネルワイゼン」、ウクライナの歌「鶴」ポリアキンの「カナリア」などの間に子供たちが歌う「さんぽ」も入れて30分はあっという間だった。子供たちの「さんぽ」は一度歌ってみてから今度はこの部分を小さな声で歌ってみようと教えたら、本当にその部分が来るとみんながびっくりする程そおっと歌って上手だった。演奏会が終わった時、どの曲が一番楽しかったかと聞いたら「さんぽ!」という声があがったのはそうかなと思ったが、「鶴!」と答えた子もいて、あの曲はウクライナの兵士が戦争で倒れ、鶴になって空を飛ぶという暗い曲なのに、子供でも何か感じることがあったのかと感慨深かった。
今の園長先生の前々代の園長先生は自分でもチェロを弾き、音大に行きたかったのをお寺を継がなければならず諦めて、でも子供たちに音楽のある豊かな生き方を教えたくてアコーディオンやピアニカやそのほか色々な楽器を揃えて子供たちと共に楽しみ、ある時は子供たちを引き連れて広島まで演奏しに行ったこともあるそうだ。
この幼稚園での演奏会は今回が初めてだったが、今後も続きそうな気がした。

2つ目は14日の和木中学校。
これは毎年岩国西ロータリークラブが主催して市内の中学校を訪れる企画なのだが、もう岩国市内の中学校すべてを回ったので今回は隣町の和木町の中学校となった。全校生徒190人ほどと先生方が、体育館ではなく、暖房の効いた立派な講堂に集まり、ピアノもヤマハのC7が置いてあった。
和木町には大きな工場がいくつもあり、給食費も無料など豊かな町なので、岩国市がまわりの町と合併して広くなった時も岩国市には属さなかった。校長先生はたまたま宇部市出身で石井と話が合ったが、やはりここでもスマホ中毒の問題や不登校など少しずつ病んでいる子供が増えてきていると話されていた。子供たちだけでなく先生方の中にも病んでいる人がいるかもしれない。管理された教育現場の在り方を憂う。
でも和木中の子供たちは大変素直だった。こちらからの問いかけにも個々ですぐに答えてくれた。今はユーチューブその他でいくらでも好きな曲を聴くことができるが、生きた人間がすぐ目の前で演奏して、音だけではない何かを感じてくれたと思う。
まわりと同じでなくてもいい。自分が自分なりに感じて生きていける力を持ってほしい。そういう事を伝えたくて演奏を続けている。

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前々代の園長先生の指揮姿

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和木中学校での演奏





9月16日から18日にかけてミュージックキャンプ宇部が開催された。
2021年はコロナのため直前になって中止、2022年は各地から受講生が集まってきてレッスンは受けたものの大型台風直撃のニュースで中途解散。まともに最後までやり切れたのは3年ぶりだった。とは言っても、今回も前日になって参加者の一人が体調不良になり急遽参加を取りやめたため、そのグループの人たちも参加できないことになってレッスンスケジュールを変更したり代わりに弾いてくれる人を探したり、とにかく始まる前の日だったので大変だった。
参加者は結局35人。東京から3人、関西から2人、広島から1人、山口県下は29人。講師はヴァイオリン石井啓一郎、チェロ桜庭茂樹、ピアノ石井啓子の3人。スメタナのピアノ三重奏曲やサンサーンスのピアノ五重奏曲、クレンゲルのチェロ四重奏曲、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲など15曲に挑んだ。レッスンは16日と17日の朝から晩まで俵田邸にて、最終日18日の午後1時半からヒストリア宇部にて演奏会が開かれた。
参加者は二日間のレッスンで得たことを十分に発揮していい演奏だった。特に、直前にチャイコフスキーの弦楽四重奏曲のヴィオラの代役を任されたSさんは本当に大変だった。耳で聴いただけでは何拍子か分からないほどの複雑なリズムで、宇部に来るまでの新幹線の中で譜読みをしてくれたのだが初めはなかなかうまくいかなかった。それでも本番までには弾けるようになり、よく頑張ったと感心した。

講師たちや東京からの参加者が宿泊したのは宇部ときわ湖畔ユースホステル。
黄色いコスモスが咲き乱れ、美しい湖が広がっていた。


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シューマンのピアノ四重奏曲

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ベートーヴェンの弦楽四重奏曲、それも難しい後期の曲

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シューベルトの「鱒」

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シューベルトのおとぎの絵本。桜庭先生が弾くと本当に演歌のように麗しい。

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演奏会の最後の曲。講師によるベートーヴェンのピアノ三重奏曲作品70-1

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